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『太陽がいっぱい』『リプリー』の原作として名高い伝説の作家パトリシア・ハイスミスの傑作小説「殺意の迷宮」が、ハリウッドの豪華キャスト共演で映画化された。ギリシャのアテネとクレタ島からトルコのイスタンブールへと舞台を移しながら、詐欺師とその美貌の妻、図らずも彼らの犯罪に加担してしまった青年の逃避行が展開していく。
『イースタン・プロミス』のヴィゴ・モーテンセン、『マリー・アントワネット』のキルスティン・ダンスト、『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』のオスカー・アイザックが、やるせない秘密を隠し持ち、欲望と妄執に囚われていく男女3人の逃避行を体現。これが監督初挑戦となる『ドライヴ』の脚本家ホセイン・アミニが、魅惑的なまでに屈折したハイスミス的なキャラクターたちの心理戦を切なくもスリリングに映し出す。その出口なき狂おしい迷宮は、神が愚かな人間に与えた残酷な試練か、それとも罠か。荘厳なギリシャ悲劇のメタファーに彩られた映像世界は、登場人物の運命の目撃者であるあなたの胸をも引き裂くに違いない。

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1962年、ギリシャのアテネでツアーガイドをしている米国人青年ライダル(オスカー・アイザック)が、パルテノン神殿で優雅なアメリカ人紳士チェスター(ヴィゴ・モーテンセン)とその妻コレット(キルスティン・ダンスト)とめぐり合う。リッチで洗練された夫妻にたちまち魅了されたライダルは、彼らのガイドを務め、楽しい夕食のひとときを共にする。ところがその夜、チェスターがホテルの部屋に現れた探偵を殺害し、ライダルがその後始末を手助けしたことから3人の運命は激変。実はチェスターは大勢の投資家を欺き、大金を奪った詐欺師だったのだ。船とバスを乗り継ぎ、偽造旅券が届くクレタ島へ向かう道中、ライダルはコレットと親密な関係となり、嫉妬心に駆られたチェスターは平常心を失っていく。やがて警察の捜査網にも追いつめられた3人は、もはや後戻りできない破滅への道を突き進んでいくのだった…。

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1958年10月20日、アメリカ・ニューヨーク州出身。ピーター・ウィアー監督作『刑事ジョン・ブック/目撃者』(85)でアーミッシュの青年を演じてスクリーンデビューを果たして以来、安定した多様性のある演技によってキャリアを築く。『柔らかい殻』(90)、『インディアン・ランナー』(91)、『カリートの道』(93)、『ある貴婦人の肖像』(96)、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(01‐03)、『ヒストリー・オブ・バイオレンス』(05)、『イースタン・プロミス』(07)、『善き人』(08)、コーマック・マッカーシーのベストセラー小説を映画化して高評価を受けた『ザ・ロード』(09)など、出演した40本以上の映画はどれも批評家の注目を浴び続けている。近作には、3度目のタッグを組んだデヴィッド・クローネンバーグ監督作『危険なメソッド』(11)、二役を演じたアルゼンチンのサスペンス・スリラー『偽りの人生』(12)がある。前述の『イースタン・プロミス』の演技で、米アカデミー賞?、ゴールデン・グローブ賞、全米映画俳優組合(SAG)賞、英アカデミー(BAFTA)賞の最優秀主演男優賞にノミネートされた。また、熟達した詩人であり、写真家であり、画家でもある。02年、アート/詩/評論を専門に扱う独立系出版社パーシヴァル・プレスを設立した。
 
1982年4月30日、アメリカ・ニュージャージー州出身。3歳でショービズ界に入り、50本以上のCMに出演したのち、89年のウディ・アレン監督作『ニューヨーク・ストーリー』でスクリーンデビューを飾った。94年に公開した『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』では、ゴールデン・グローブ賞助演女優賞にノミネートされた。その後、『若草物語』(94)、『ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ』(97)、高評価を受けた『ヴァージン・スーサイズ』(99)、『チアーズ!』(00)など着実にキャリアを重ね、サム・ライミ監督の『スパイダーマン』シリーズ(02‐07)でヒロインに抜擢された。他、『モナリザ・スマイル』(03)、『エターナル・サンシャイン』『ウィンブルドン』(共に04)、『エリザベス・タウン』(05)、『マリー・アントワネット』(06)、『バチェロレッテ-あの子が結婚するなんて!』『オン・ザ・ロード』『アップサイドダウン 重力の恋人』(全て12)、など話題作に出演。ラース・フォン・トリアー監督作『メランコリア』では、11年カンヌ国際映画祭最優秀女優賞および全米批評家協会賞最優秀主演女優賞を受賞した。待機作は、ジェフ・ニコルズ監督、マイケル・シャノン共演の『MIDNIGHT SPECIAL』がある。
 
1980年8月9日、グアテマラ共和国出身。名門音楽大学のジュリアード学院を卒業後、02年に俳優デビューを果たす。出演作には、『ダイアナの選択』『チェ 28歳の革命』『ワールド・オブ・ライズ』(全て08)、『アレクサンドリア』(09)、『エンジェル・ウォーズ』(11)など。近作には、『ロビン・フッド』(10)、『ドライヴ』(11)、『ウォリスとエドワード 英国王冠をかけた恋』(11)、「ボーン」シリーズ4作目の『ボーン・レガシー』(12)、そして映画初主演となる『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』(13)では、14年ゴールデン・グローブ賞、インディペンデント・スピリット賞ほか数々の映画祭で主演男優賞にノミネートされた。待機作は、『A Most Violent Year』(14)が6月に日本公開。
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1966年、イラン出身。98年、ヘンリー・ジェイムズの古典小説を映画化した『鳩の翼』(97)の脚本で英アカデミー(BAFTA)賞および米アカデミー賞®にノミネートされた。他にも、イギリスの作家トーマス・ハーディの小説「日陰者ジュード」を脚色した『日蔭のふたり』(96)でエディンバラ国際映画祭最優秀英国作品賞を受賞、『サハラに舞う羽根』(02)、『キルショット』(08・未)などの脚本を手掛けている。11年に担当した『ドライヴ』の脚本では、カンヌ国際映画祭パルムドール賞や、12年のBAFTA賞最優秀作品賞にノミネートされた。近作は、共同脚本を担当した『スノーホワイト』(12)がある。待機作として、ジョン・ル・カレ原作『Our Kind of Traitor』(14)の脚本を担当。


1921年1月19日~1995年2月4日、アメリカ・テキサス州出身。1950年「見知らぬ乗客」で長編小説デビューを果たし、翌51年、アルフレッド・ヒッチコック監督により映画化。55年に「太陽がいっぱい」でフランス推理小説大賞を受賞し、60年にアラン・ドロン主演で映画化され大ヒット作品となった。のちに、「太陽がいっぱい」に登場したトム・リプリーの物語はシリーズ化され、『アメリカの友人』(77)、『リプリー』(99/「太陽がいっぱい」原作)として映画化された。本作の原作となる「殺意の迷宮」(創元推理文庫)は、64年イギリス推理作家協会(CWA)賞外国作品賞を受賞。今後も、『Carol』(未邦訳)、『The Blunderer』 (原作「妻を殺したかった男」)、デヴィッド・フィンチャー監督で『見知らぬ乗客』のリメイクなどハイスミス原作の作品が控えている。


舞台の脚本・製作からキャリアをスタートさせ、携わった映画作品には『モーヴァン』(02)、ベン・アフレックが監督を務めた短編映画『Gimme Shelter』がある。また、『The Statement』(03)では共同製作を務め、『Mischief Night』『Alpha Male』(共に06)では製作総指揮を担当。他、実の妹ショーン・スロヴォが脚本を担当した『輝く夜明けに向かって』(06)や、ジョン・ル・カレ原作『裏切りのサーカス』の製作を担当。


スペインで最も賞賛される作曲家の一人。『ボルベール<帰郷>』(06)と『抱擁のかけら』(09)でヨーロッパ映画賞最優秀オリジナルサウンドトラック賞を2度受賞。『ナイロビの蜂』(05)、『君のためなら千回でも』(07)で米アカデミー賞®と英アカデミー(BAFTA)賞にノミネートされた。また、スペインのゴヤ賞は10度受賞している。11年には『裏切りのサーカス』『私が、生きる肌』の両作品で、第15回ハリウッド映画賞作曲家賞を受賞。12年に『裏切りのサーカス』で3度目の米アカデミー賞®、とBAFTA賞にノミネートされた。

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パトリシア・ハイスミスの小説の虜になった監督が語る、
ギリシャ神話のメタファー

『ギリシャに消えた嘘』はホセイン・アミニ監督にとって、15年近い年月にわたって情熱を注いできたプロジェクトである。アミニは「初めて読んだのは大学時代だった。この小説のキャラクターたちの虜になったんだ。チェスターはハイスミスが描いた本物の悪役だが、彼は物語の終盤で驚きと贖いの行動に出る。それが問題を抱えた危険な悪人たちに対するハイスミスの深い慈悲の心を感じさせ、僕は作業の手を止めて考え込んだ。彼女は読者をこの悪役と同じ位置に置くばかりでなく、彼らに対して奇妙な思いやりと理解を抱くように導いている。」と語る。そして、「ふたりの男の心理戦がテーマであり、それが最も大きく僕の心に響いていた」とアミニは話す。「ふたりの男が反目し合うというアイデアが好きだ。たとえ、ひとりがもうひとりを破壊しなくてはならないとしても、闘いの最中にはふたりの間に敬意と深い愛情がある。当初、僕はこの物語がテセウス、アリアドネ、ミノタウロスの愛の三角関係のようなものだと考えていた。しかし徐々にゼウスとクロノスの物語に近く、一人前の男になるために父親を殺さねばならない息子が物語の着想ではないかと思うようになったんだ」。
アミニは監督デビューの準備として、複数の映画を参照して影響を受けた。近代スリラーの父と言われるヒッチコックの作品はもちろん、本作の舞台や時代背景に通じるフランスやイタリアのサスペンス・スリラーを夢中になって研究した。そのなかにはミケランジェロ・アントニオーニ監督の『情事』やジャン=リュック・ゴダール監督の『軽蔑』があり、アミニは「世界観、風景、構図への感覚を養いたかった」と説明する。さらにアミニは本作の精神性について、ハイスミスの小説を再映画化した『リプリー』よりも、アラン・ドロンがトム・リプリー役を演じたオリジナルのフランス映画『太陽がいっぱい』に近いと考えている。

男女三人の複雑な関係性を表現した、豪華キャストの魅惑的なアンサンブル
ヴィゴ・モーテンセンがチェスター役に決まった後、ホセイン・アミニ監督はこのキャラクターに微調整を加えた。「ヴィゴはヒーローに見えるし、このキャラクターにはギャツビー的な要素がある。でも、それは小説にはあまり存在しない要素だ。印象的で、ハンサムで、カリスマ性を持つ男という要素が僕は好きだ。チェスターはそういうタイプのキャラクターのほうが魅力がある」。
アミニは『ドライヴ』でライダル役のオスカー・アイザックと仕事を共にした経験があった。「たくさんの俳優に会ったが、"オスカーは完璧だ"とずっと思い続けていたんだ。幸運にもコーエン兄弟が先にオスカーを『インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌』に配役してくれたから、僕たちが彼を配役するのはずっと楽になった。オスカーは素晴らしい俳優で、柔らかさがある。彼の目にクローズアップすると、本物の純粋さと脆さが見えるんだ」と話す。
当初、アミニはコレット役に別の女優を考えていたが、この役に興味を示したキルスティン・ダンストと会い、即座に魅了された。「小説のコレットはほとんど教育を受けていない、色情狂のような女性だ」と説明し、ダンストが演じたヒロインとはかなり異なっていると言う。「キルスティンは演じるどの役にも、無意識に本物の洗練された知性をもたらす。そう考えると、彼女はコレットのキャラクターをより立体的に演じるだろうと思ったんだ。チェスター、ライダル、コレットという3つの役はすべて小説から着想を得ているが、映画の彼らは多くの意味でかなり違っている」。

幸運の女神が微笑んだアテネとクレタ島、そしてイスタンブールでのロケ撮影
本作の物語は、古代ギリシャの遺跡アクロポリスを訪れたチェスターとコレットのマクファーランド夫妻がライダルと出会うシーンで幕を開ける。通常、パルテノン神殿は訪問者が周辺を歩き回ることさえ制限されているが、素晴らしいことに一行は内部での撮影許可を得ることができた。このギリシャで最も観光客で賑わう場所のひとつで撮影するため、美術のマイケル・カーリンとそのクルーは、遺跡の周辺にある現代的な照明や看板を合成樹脂で作った瓦礫や石などで覆う必要があった。またアミニ監督は古代遺跡に腰掛けてアングルを選択しながら、2台の巨大なクレーンで撮影を行い、カメラのフレームの中の遺跡以外のものをデジタル処理によって取り除いていった。クライマックスのシークエンスは、イスタンブールのグランドバザールで撮影された。縦横に交差する迷路のような大通りや路地での追跡劇は、アミニが『第三の男』に敬意を表して創り上げたノワール調の印象的な場面となった。グランドバザールでは店が閉まった夜しか撮影できなかったため、カーリンはここでの撮影が「一番難しかった」と振り返る。
一行が最もリラックスできたのは、クレタ島での撮影だった。放射線状に広がる美しい港町ハニアを拠点に、近くの埃っぽい丘陵、ハニアの路地や通路、海に面した区域でいくつかのシークエンスを撮影した。また撮影班は三人が警察に追われて逃走したのち、一緒に食事をとるシーンのために海辺の広場を造った。パニックに陥ったチェスターが群衆を押し分けて、妻とライダルを探すシーンもそこで撮影された。さらにギリシャの全国ストライキは、撮影班に偶然の幸運をもたらした。一行はテセウスとミノタウロスの神話を生み出し、青銅器時代のミノス文明が栄えた都市クノッソスで、遺跡の警備員が労働争議で不在の中、大勢の旅行客に囲まれることもなく撮影することができたのだ。
また本作はデジタルで撮影されたが、デンマーク人の撮影監督マルセル・ザイスキンドは、当初フィルムでの撮影を考えていたアミニ監督のためにフィルム用のアナモルフィック・レンズを使用した。そのアイデアがソフトで古典的なイメージを創り出し、フィルム撮影に近い映像を可能にしたのである。

1960年代風のエレガンスを再現しながら、
現代的な要素を加えたコスチューム

1962年のヨーロッパを旅する洗練されたアメリカ人夫婦にふさわしく、チェスターとコレットは富を反映したエレガントな洋服を身にまとっている。衣装デザイナーのスティーヴン・ノーブルは、チェスターが大部分の場面で着用するスーツに関して、小説「華麗なるギャツビー」からインスピレーションを得た。一方、ノーブルはキルスティン・ダンストが着るビンテージ物のドレス2着を調達し、オリジナルの生地に遺跡のデザインをデジタルプリントした。「彼女は、60年代初期にしてはかなり流行に敏感な女性だ。でも、裾のラインはまだ膝下なんだ。キルスティンと考えたのは、歩くとくねくねした動きが出てセクシーに見える身体にぴったりしたペンシルラインだった」とノーブルは話す。そしてコレットのような女性が当時身に着けていた帽子や手袋といったアクセサリーの数を減らすことで、現代的な要素を付け加えた。
キャストの衣装に関して、ノーブルは当時の雑誌や映画を研究し、20世紀初頭から半ばにかけてクレタ島で撮影されたお宝映像も参照した。ライダルの衣装は、2年間アテネに在住する若者にふさわしいよう当時のギリシャのブランド製品を多用した。大半はロンドンの衣装会社から調達したオリジナルである。
ノーブルの衣装チームは、三人の主演俳優を助ける大切な要因であるエキストラ全員が、時代にふさわしい洋服とヘアスタイルをまとうことに気を配った。「多くの場合、たとえ大作映画でも、背景の奥の人たちまできちんとした時代背景の衣装を着ているとは限らないんだ。しかしこの映画では、ギリシャやグランドバザールであろうと、僕らが通り過ぎるだけのシーンであろうと、背景の人々が皆きちんとしている。実際にその時代にいるような気分にさせてくれるんだ」とモーテンセンは語る。

 
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