ハギスからのヒント

これは3つのラブストーリーのフリをしているけれど、実はパズルのような映画なんだ。特に視覚的な面でね。たくさんのヒントを劇中に仕掛けたので、なんでこんなことが起こっているんだろうって思ってほしい。こんなこと有り得ない、じゃあ何が本当なんだろうって。そして最後に繋がっていくんだ。この映画にすべての答えは用意していない、映画の後に友達とディスカッションして自分なりの答えを見つけてほしい。

ポール・ハギス

  • 劇中で何度も繰り返されるあるフレーズ、そこに注目!
  • “バー・アメリカーノ”でスコットが外を見ると、老人が入ってきて、店の外をベンツが通りかかる。そのベンツの後部座席に座っている女性が実はアンナ。
  • パリでマイケルが携帯番号をメモした紙と、NYでジュリアが住所をメモした紙が同じ紙。
  • マイケルとアンナがパリで眺めているアートがリックの作品。
  • NYのホテルで呆然と廊下を歩いているジュリアに挨拶する女性がアンナ。
  • <番外編>マイケルとアンナの道端で靴ひもを結ぶエピソードはハギスの実体験。

『サード・パーソン』というタイトルに関して

どんな人間関係においても誰がその関係に大きな影響力を持っているかはミステリーだと思う。この映画の3つのどのストーリーもある3人目の影響力を持った人は誰なのかが模索されている。同時に、三人称はクリエイティビティを語るときに面白いなと思ったんだよ。僕たちは物作りをするときによく三人称を使う。マイケルも自分自身の日記で“彼”、“彼女”と三人称で呼んでいるんだけど、映画で監督が行うことと一緒なんだ。つまりすべてのキャラクターは自分自身なんだけど、その三人称のキャラクターを通して自分自身を模索しているんだ。マイケルは自分でキャラクターを作ってコントロールしていると思い込んでいるが、実はある現実を否定している。その現実と向き合おうと抗って戦うのだけれど、結果的には彼が綴っているキャラクターたちに導かれているというストーリーなんだ。

脚本について

これはクリエイティビティを模索している作品でもあって、映像作家など全てのアーティストというのは一体何を犠牲にしているのかを問いかけているんだ。自己中心的な存在で、多くの時間を捧げて作品を作る。でも、それで苦しむのは周りの人間なんだ。自分の場合は子供たちだと思った。だから、この映画に出てくるキャラクターはみんな子供を守ろうとしている。時に人間というのは、守ろうとする対象を守ろうとしている事で傷つけてしまう。そして、傷つけてしまった重さを抱えて生きていく。この作品のキャラクターたちはまさにそうなんだ。そして、この作品を通して自分を見つめなおしたときに、自分にとって大切なものってなんだろうと考えた。それは「愛とアートだと」。でも、どっちかを選ばなければならなかった場合、どうするんだ・・・って瞬間で映画は終わっているんだ。自分自身にとっても、愛する女性と良いストーリーがあったらそれは難しい選択だよ。