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前作から9年を経て「リディック」が三度(みたび)スクリーンに登場したのは製作者たちの情熱と、彼らを支えたファンの熱い想いがあったからだ。リディックをライフワークのように演じ続け、製作も兼任するヴィン・ディーゼルは「デヴィッド(・トゥーヒー)が書いた『ピッチブラック』の脚本を読んだときに、オレはリディックに恋してしまった。彼は真のアンチヒーローだったからだ」と回想する。

リディックに恋したのはディーゼルだけではない。世界中のSFファンやアクションファンも同様にこの宇宙最凶のワルに夢中になり、2004年、ディーゼル×トゥーヒーのコンビによって第2弾『リディック』が作られた。

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その後、リディックを主人公にしたビデオゲームやDVD用のアニメーションが作られ、第3弾の製作が待ち望まれていたのだ。トゥーヒーはこう説明する。「ファンからの声が鳴り止まなかった。私が作った映画のなかで『リディック』シリーズに関する要求がもっとも多かったんだ!」。

ディーゼルもまた、フェイスブック上で4500万人以上のファンから熱いラブコールを受けていた。「“次の『リディック』はいつ出来るの?続編を絶対作って!”という声がたくさん書き込まれるんだ。こんな声を聞けば、何があっても作らなければという気持ちになるさ」という。

常にコンタクトをとってきたディーゼルとトゥーヒーはこの第3章を、2作目の『リディック』が持つ深い神話性を保ちつつ、最初の『ピッチブラック』に回帰して、緊張感のある、強烈なSFスリラーにすることで同意した。ちなみにディーゼルは本シリーズの映画化権を『ワイルド・スピードX3 TOKYO DRIFT』のギャラを返上して手に入れ、本作製作のため自宅を抵当に入れて資金を捻出したという。

ハイブリッドによって生まれた、新たなる世界観

『ピッチブラック』の恐怖と『リディック』の驚異的な映像を併せ持った第3章。その舞台に選ばれたのはカナダのモントリオールだった。屋内の撮影には『300<スリーハンドレッド>』で使われたスタジオを使用。4つのサウンドステージに8つの舞台を作ることになり、ひとつを壊して次を建てるという大胆な方法でそれを可能にした。これによりリディックが追放された銀河の果ての惑星の厳しい自然を再現したのだ。

またリディックと賞金稼ぎたちが駆け引きを繰り広げる基地(シェルター)は、ケベック北部に位置するツンドラ地帯のクージュアクという小さな村をモデルに作られた。巨大なサウンドステージ内に、トラック9台分の泥と粗石やコンクリート、土や砂利を使ってツンドラを表現したのだ。

シェルター、ジェットホグ、リアルな宇宙船

リディックと賞金稼ぎたちが集まる基地(シェルター)は実用的なデザインが施され、まるで10年前から使われていなかったかのような雰囲気が加えられた。シェルターに着陸する傭兵たちの宇宙船は本物と見まがうばかりのフルスケールのものが建造された。

完璧に機能するドアとタラップ、さらにボーイング747機の本物の着陸装置が使われた。一方、戦闘能力をもつ貨物船のコックピットには、計器パネルやコントロール機器、電力モジュールやスリーピングハーネスが取り付けられた。それらすべてのデザインはレトロフューチャー風でありつつリアルなものが採用された。

また、ボス・ジョンズ一行が短距離移動に使用するオフロード用のバイク、ジェットホグは、タイヤの代わりにホバリング機能がつき、空気タービンとジェット推進を原動力とするマシン。これもまたレトロフューチャーのテイストを保ちながら、チョッパーバイクを彷彿とさせるデザインとなった。

オリジナル・クリーチャー、エイリアン・ジャッカルとマッド・デーモン

シリーズのお約束にもなったユニークなクリーチャーが本作では2種類登場する。そのひとつは、子供のころリディックに拾われ、心を通わすようになるエイリアン・ジャッカル。デザインはカナダのモッコ・スタジオが手がけ、ロサンゼルスのティンズレー・スタジオが製作を担当した。

もうひとつの水棲エイリアンはマッド・デーモン(沼地の悪魔)と名づけられた。剃刀の尻尾をもつ極めて危険で獰猛な動物だ。トゥーヒーはそれらクリーチャーたちを表現するため『ピッチブラック』のときに立ち返り「『ピッチブラック』と同じように、俳優がクリーチャーと直接関わるときはパペットを使い、多くの場合はデジタルとパペットの組み合わせを使った」という。マッド・デーモンの操演を担当したスタッフたちは、2週間ものあいだ、暑くてねばねばする泥に浸かって作業したという。

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